【会社設立後に知っておきたい税務】米国人従業員を国内採用した場合の、源泉所得税の徴収と納付

  米国国籍を持つ人と雇用契約を締結し、日本国内に来日して働いてもらう場合に支払うこととなる給与については、他の日本人従業員と同様に源泉所得税の徴収と納付を行えばよいのかを説明してきます。

1.所得税法上の非永住者とは

 所得税法上、国内に住所(生活の本拠)を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を「居住者」といいます。

 その居住者のうち、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人を「非永住者」といいます。

 今回のご相談の採用予定者については、採用後は日本国内に生活の本拠を有し、かつ、過去において日本国内に住所等を有していたことがないことから、所得税法上は「居住者である非永住者」として取り扱われることとなります。

2.非永住者に対する所得税の課税範囲と源泉徴収義務

 非永住者に対する所得税の課税範囲は、下記のとおりです。

  • ① 国外源泉所得(国外において行う勤務に基因する給与等をいいます)以外の所得(便宜上、この解説では「国内源泉所得」とします)
  • ② 国外源泉所得で国内において支払われたもの
  • ③ 国外源泉所得で国外から送金されたもの

 今回のご相談の給与は、日本国内での勤務に基因して支給されるもの(国内源泉所得)であることから、上記①に該当し、所得税の課税対象となります。

 また、居住者に対し国内において給与等の支払をする者に対しては、その支払の際、その給与等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならないという源泉徴収義務が課せられています。

 したがって、今回のご相談の給与についても所得税を源泉徴収し、徴収した金額を国に納付することとなります。

(留意点:日米租税条約との関係)

 我が国が他国と締結した租税条約と国内法の関係は、租税条約が常に優先します。

 一方で、租税条約で取り決めがない事項については、国内法がそのまま適用されます。

 このため、今回のご相談の場合については、まず、上記1.と2.の所得税法(国内法)の取扱いを確認したうえで、日米租税条約でその取扱いについて補正される部分があるかどうかを追加確認する必要があります。

 日米租税条約では、個人は、その使用する恒久的住居が所在する締約国の居住者とみなすこととされています。このため、今回の採用予定者は、採用後は日本国内にのみ住居を有することから、日米租税条約上も日本の居住者として取り扱われるものと考えられます。また、日本の居住者がその勤務について取得する給料等に対しては、勤務が米国国内において行われない限り、日本においてのみ租税を課することができるとも定められています。

 したがって、今回のご相談の給与に対する所得税法の取扱いについては、日米租税条約で補正される部分はないものと考えられることから、所得税の課税の有無やその徴収・納付の取扱いについては上記1.と2.のとおりであると考えられます。

[参考]
 所法2、7、95、183、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約4、14など

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