適格請求書等保存方式の概要

問1 令和5年 10 月1日から開始される「適格請求書等保存方式」の概要を教えてください。
【令和4年4月改訂】

回答

複数税率に対応した仕入税額控除の方式として、令和5年 10 月1日から「適格請求書等保
存方式」(いわゆる「インボイス制度」)が開始されます(新消法 30、57 の2、57 の4)。

1 適格請求書発行事業者の登録制度
適格請求書等保存方式においては、仕入税額控除の要件として、原則、適格請求書発行事
業者から交付を受けた適格請求書の保存が必要になります。
適格請求書を交付しようとする事業者は、納税地を所轄する税務署長に適格請求書発行事
業者の登録申請書(以下「登録申請書」といいます。)を提出し、適格請求書発行事業者とし
て登録を受ける必要があり(登録を受けることができるのは、課税事業者に限られます。)、
税務署長は、氏名又は名称及び登録番号等を適格請求書発行事業者登録簿に登載し、登録を
行います(新消法 57 の2①②④)。登録申請書は、e-Tax を利用して提出できます。

また、相手方から交付を受けた請求書等が適格請求書に該当することを客観的に確認でき
るよう、適格請求書発行事業者の情報については、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイ
ト」において公表されます。

(注) 適格請求書とは、次の事項が記載された書類(請求書、納品書、領収書、レシート
等)をいいます(新消法 57 の4①)。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産
の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
④ 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及
び適用税率
⑤ 税率ごとに区分した消費税額等(消費税額及び地方消費税額に相当する金額の合
計額をいいます。以下同じです。)
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

2 適格請求書の交付義務等
適格請求書発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課
税事業者に限ります。)から適格請求書の交付を求められたときは適格請求書の交付義務が課
されています(新消法 57 の4①)。
ただし、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な
次の取引については、適格請求書の交付義務が免除されます(新消法 57 の4①、新消令 70
の9②、新消規 26 の6)。
① 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
② 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者
が卸売の業務として行うものに限ります。)
③ 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売
(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
④ 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
⑤ 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限
ります。)
 なお、小売業、飲食店業、タクシー業等の不特定多数の者に対して資産の譲渡等を行う事
業については、適格請求書の記載事項を簡易なものとした適格簡易請求書を交付することが
できます(新消法 57 の4②、新消令 70 の 11)。
また、適格請求書や適格簡易請求書の交付に代えて、これらに係る電磁的記録を提供する
こともできます(新消法 57 の4⑤)。

3 仕入税額控除の要件
適格請求書等保存方式の下では、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が仕入
税額控除の要件となります(新消法 30⑦⑧⑨)。
保存すべき請求書等には、適格請求書のほか、次の書類等も含まれます。
イ 適格簡易請求書
ロ 適格請求書又は適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録
ハ 適格請求書の記載事項が記載された仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類
(課税仕入れの相手方において課税資産の譲渡等に該当するもので、相手方の確認を受け
たものに限ります。)(書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を含みます。)
ニ 次の取引について、媒介又は取次ぎに係る業務を行う者が作成する一定の書類(書類に
記載すべき事項に係る電磁的記録を含みます。)
・ 卸売市場において出荷者から委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の
販売
・ 農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等が生産者(組合員等)から委託を受けて
行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式によるものに限ります。)
なお、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、次の取引については、
一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(新消法 30⑦、新消令
49①、新消規 15 の4)。
① 適格請求書の交付義務が免除される上記2①の3万円未満の公共交通機関(船舶、バス
又は鉄道)による旅客の運送
② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用
の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。)
③ 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚
卸資産に該当する場合に限ります。)の購入
④ 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に
該当する場合に限ります。)の取得
⑤ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業
を営む者の棚卸資産に該当する場合に限ります。)の購入
⑥ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当
する場合に限ります。)の購入
⑦ 適格請求書の交付義務が免除される上記2④の3万円未満の自動販売機及び自動サービ
ス機からの商品の購入等
⑧ 適格請求書の交付義務が免除される上記2⑤の郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物
サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通
勤手当)

国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」より抜粋

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