タワーマンションによる相続税節税の裁判事例 その2
以前、タワーマンションによる相続税節税の裁判事例として更正を受けたタワーマンションを活用した節税事例を紹介しましたが、金額が大きく、判決も最近のものがありましたので紹介いたします。
概要は下記に記載しておきます。数分で読める内容なので読んでいただきたいのですが、かいつまんで説明すると、死亡する3年ほど前に10億円の借金をして13億円以上で購入したマンションを3億円で評価することによって10億円以上評価減を行った結果、6億円以上財産があったにもかかわらず相続税をゼロにしたという事例です。税務署側としては節税目的のスキームとしてとらえ、鑑定評価を用いた税額計算で更正されたわけですが、タワーマンションにより節税は注意が必要となっています。
引用はTAINSからTAINSコードZ888-2406になります。
1 本件は、共同相続人である上告人らが、甲不動産及び乙不動産(各不動産)について、財産評価基本通達(評価通達)の定める方法により価額を評価して相続税の申告をしたところ、札幌南税務署長から、各不動産の価額は評価通達の定めによって評価することが著しく不適当(評価通達6)と認められるから鑑定評価額をもって評価すべきであるとして、各更正処分等を受けたため、被上告人を相手に、これらの取消しを求める事案である。
2 原審は、各不動産の価額については、評価通達の定める方法により評価すると実質的な租税負担の公平を著しく害し不当な結果を招来すると認められるから、他の合理的な方法によって評価することが許されると判断した上で、各鑑定評価額は各不動産の時価(客観的な交換価値)であると認められるから、各更正処分等は適法であるとした。所論は、原審の上記判断には相続税法22条等の法令の解釈適用を誤った違法があるというものである。
3 相続税の課税価格に算入される財産の価額は、当該財産の取得の時における客観的な交換価値としての時価を上回らない限り、相続税法22条に違反するものではない。各鑑定評価額は、客観的な交換価値としての時価であると認められるから、これが各通達評価額を上回るからといって、相続税法22条に違反するものということはできない。
4 他方、課税庁が評価通達に従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、合理的な理由がない限り、租税法上の一般原則としての平等原則に違反するものとして違法というべきである。もっとも、財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。
5 各通達評価額(3億3370万円余)と各鑑定評価額(12億7300万円)との間には大きなかい離があるものの、このことをもって上記事情があるということはできない。もっとも、本件購入・借入れ(13億8700万円の各不動産の購入・10億5500万円の借入れ)が行われなければ課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になるというのであるから、上告人らの相続税の負担は著しく軽減されることになるというべきである。そして、被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる。
6 そうすると、各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。
7 したがって、各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するということはできない。
8 以上によれば、各更正処分において、各不動産の価額を各鑑定評価額に基づき評価したことは、適法というべきである。所論の点に関する原審の判断は、以上の趣旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することができない。
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