汚染除去の義務が発生しない土壌汚染地の評価

令和3年12月1日裁決においてでた土壌汚染が土地の価格形成に影響を及ぼす場合について、土地の評価減を認めることを相当であるという判決が出ている。

土壌汚染地の評価については、既に「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」(平成16年7月5日付国税庁課税部資産評価企画官情報第3号・国税庁課税部資産課税課情報第13号)において公表されている。これについてはページ下に参考情報として記載しておく。

今回の判決で注目するのは、今回の土地が土壌汚染対策法上の義務的調査の対象でなく、土壌汚染が懸念されることを想定して調査委機関に調査を依頼し、その結果に基づき現状の使用方法が最有効ではないから、最有効にするために必要な浄化のための合理的な費用金額を控除できるということを認められた事案として意義がある。

ただ、今後同じように自主的に調査した結果をもって、浄化費用を控除できるかというとそうとは言い切れないことではあるが、駐車場などに利用されている商業地域などにおける広い土地を相続する場合には減額の可能性があるということは心にとどめておきたい。

(以下、国税不服審判所、採決事例集より抜粋)

国税庁課税部資産評価企画官情報第3号・国税庁課税部資産課税課情報第13号。以下「本件情報」という。)には、土壌汚染地における相続税等の課税上の評価方法について、要旨次のとおり記載されている。
(1) 土壌汚染対策法が平成15年2月15日から施行され、今後、土壌汚染地であることが判明し、相続税等の課税上、問題となる事例が生ずることが考えられることから、土壌汚染地の評価方法の基本的な考え方を取りまとめることとした。
(2) 土壌汚染対策法の下では、都道府県知事は、土壌の汚染状態が基準に適合しない土地について、その区域を指定区域として指定・公示し(土壌汚染対策法(平成17年法律第33号による改正前のものをいう。以下同じ。)第5条《指定区域の指定等》)、指定区域内の土地のうち、土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがあると認めるときは、土地の所有者に対し、有害物質の除去、拡散の防止その他の汚染の除去等の措置を命ずる(土壌汚染対策法第7条《措置命令指》第1項)ことになる。
(3) 米国における土壌汚染地の鑑定評価を参考にすると、1原価方式、2比較方式及び3収益還元方式の3つの評価方式があるが、2及び3の評価方式は、現段階において標準的な評価方法とすることは難しいと考えられる。
 一方、1原価方式は「使用収益制限による減価」及び「心理的要因による減価」をどのようにみるかという問題はあるものの、「汚染がないものとした場合の評価額」及び「浄化・改善費用に相当する金額」が把握できることからすると、土壌汚染地の基本的な評価方法とすることが可能な方法であると考えられる。
 なお、相続税等の財産評価において、土壌汚染地として評価する土地は、「課税時期において、評価対象地の土壌汚染の状況が判明している土地」であり、土壌汚染の可能性があるなどの潜在的な段階では土壌汚染地として評価することはできない。
(4) 原価方式による土壌汚染地の評価方式は、次のとおりである。
原価方式による土壌汚染地の評価方式

(注)1 「浄化・改善費用」とは、土壌汚染の除去、遮水工封じ込め等の措置を実施するための費用をいい、汚染がないものとした場合の評価額が地価公示価格レベルの80%相当額(相続税評価額)となることから、控除すべき浄化・改善費用についても見積額の80%相当額を浄化・改善費用とするのが相当である。
2 「使用収益制限による減価」とは、上記1の措置のうち土壌汚染の除去以外の措置を実施した場合に、その措置の機能を維持するための利用制限に伴い生ずる減価をいう。
3 「心理的要因による減価」とは、土壌汚染の存在(あるいは過去に存在した)に起因する心理的な嫌悪感から生ずる減価要因をいう。
4 汚染の浄化の措置等については、評価時期において最も合理的と認められる措置によることとする。なお、各控除額の合計額が汚染がないものとした場合の評価額を超えるときには、その価額(汚染がないものとした場合の評価額)を限度とするのが相当である。

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