勤務実態がない家族を名目上の役員として報酬を支給した場合

勤務実態がないにもかかわらず、登記上役員にしているため役員報酬を支払えるかという相談をよく受けます。

本来役員報酬は経済活動を行うために必要な経費として、これを損金の額に算入するが、職務行為の対価として相当な額を超える額はたとえ報酬という名目であろうと実質的には利益処分である賞与に該当するものとしてこれを損金の額に算入しないものとすると解されています。ですので、実態がないのに支払う場合は賞与扱いを受ける可能性がありリスクがあります。

これについて実際に国税不服審判所で採決された事例がありますので紹介します。平9.9.29裁決、裁決事例集No.54 306頁からの引用です。いまから30年近く前のものとなっていますが、このあいだの物価などはおおきく変更していないので金額的にまだまだ有効であるかと思います。

こちらの事例はパチンコホールを営む同族会社の役員に対する支払いについてになります。3名の勤務実態のない役員に対して、300万円~900万円の間で支払いを行っていました。登記や議事録など形式的な要件は全て満たした形で損金算入処理をしていました。

しかし、税務署では、不相当に高額な部分の金額があるとしてこの金額のうちの大部分を損金不参入として更正処分としました。

実際この3名の勤務実態としては以下のとおりでした。

1)取締役に選任されているが、取締役としての業務分担はなく、時々出社している程度

2)取締役に選任されているが、取締役としての業務分担はなく、代表取締役が個人で営む衣料品店の事業専従者として、専らその仕事に従事している

3)取締役に選任されているが、請求人の職務を遂行した事実はないこと

これを受けて不服審判所にて審議されましたが結果として税務署と似た判断結果になりました。結論として認められたのは、年間110万円~180万円の役員報酬です。この根拠としては、その近隣の同規模、同業種の法人(平成4年7月期及び平成5年7月期各4件、平成6年7月期5件)と同様の職務遂行の状況にあると認められる取締役に対して支給した報酬の平均額を基準として役員報酬として相当と認められる一人当たりの報酬額を算定すると、平成4年7月期については1,320,000円、平成5年7月期については1,500,000円及び平成6年7月期については1,920,000円となるということでした。

この会社の業績は売上が40億円超、売上総利益が6億円超だったので、売上や売上総利益がそこまでにない会社がそのままこの金額は適用できないかもしれません。とはいえ、勤務実態のない非常勤役員について報酬が認められた判決は注目すべて点になっております。

こちらの判決に興味がある方は国税不服審判所のホームページに掲載されていますので、ご参考にしてください。

(引用元)国税不服審判所 平9.9.29裁決、裁決事例集No.54 306頁

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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