売掛金の評価を利用した節税方法

企業経営において、売掛金(未回収の売上)は財務諸表に計上される重要な資産ですが、売掛金の評価方法を工夫することで節税効果を得ることが可能です。具体的には、回収不能の可能性がある売掛金を「貸倒引当金」や「貸倒損失」として計上することで、課税所得を減少させ、結果として法人税の負担を軽減できます。

ここでは、売掛金の評価に関する基本的な考え方や節税に繋がる具体的な方法、また適用における注意点について詳しく解説します。

1. 売掛金とは?

売掛金とは、企業が商品やサービスを販売・提供した際に、代金を後払いで受け取る権利を指します。企業の貸借対照表(B/S)の「流動資産」に計上される資産の一種です。

例:
・商品を100万円で販売し、代金を翌月末に受け取る場合
➡ 貸借対照表に「売掛金100万円」として計上

売掛金は、企業の資産として計上されますが、取引先が倒産したり、支払いが長期にわたって滞ったりする場合、最終的に回収不能となる可能性があります。こうした未回収リスクに備えるために、「貸倒引当金」や「貸倒損失」を計上することで、税務上の損金(経費)として処理し、課税所得を減少させることが可能です。

2. 売掛金を利用した節税の基本的な考え方

売掛金を利用した節税方法は、以下の2つに大別されます:

・貸倒引当金の計上
・貸倒損失の計上

いずれも未回収となるリスクに備えて会計処理を行うことで、税務上の損金(経費)に算入し、法人税負担を軽減することが可能です。

3. 貸倒引当金の計上による節税

(1) 貸倒引当金の概要

・貸倒引当金は「将来回収できない可能性のある売掛金」に対して事前に備えを行うもの
・税務上、一定の要件を満たした場合に損金として計上可能
・貸倒引当金を計上することで、課税所得を圧縮し、法人税の負担を軽減

(2) 貸倒引当金の計上ルール

貸倒引当金は、以下の方法で計上可能:

✅ 個別評価による引当
・取引先の財務状況が悪化しており、回収が困難であると合理的に判断できる場合
・具体的な金額を見積もり、引当金を設定可能

✅ 一括評価による引当
・多数の取引先がある場合に、過去の回収率などから一律に引当金を設定可能
・税法上、売掛金総額の0.3%~1.0%まで損金として認められる

(3) 貸倒引当金の節税効果

例:
・売掛金総額:1億円
・貸倒引当率:1%(卸売業の場合)
➡ 貸倒引当金:1億円 × 1.0% = 100万円

法人税率33%の場合:
100万円 × 33% = 33万円の節税効果

(4) 貸倒引当金の計上のポイント

・実際に回収不能となった場合、貸倒引当金を「貸倒損失」として処理可能
・未回収が明確になった時点で損金に振り替え
・貸倒引当金が過大になると税務調査で指摘を受ける可能性がある

4. 貸倒損失の計上による節税

貸倒損失とは、引先の経営悪化や倒産などにより、売掛金や貸付金などの債権が回収不能になった際に発生する損失で損金として計上できる項目です。このような場合、売掛金を貸倒損失として計上し、法人税負担を軽減できます。

(2) 貸倒損失の計上ルール

✅ 金銭債権が切り捨てられた場合
・法的に破産手続きなどが開始されて切り捨てられた額
・回収不能となり債務免除した額

✅ 一定期間取引停止後弁済がない場合
・継続的な取引を行っていた債務者の資産状況などが悪化し取引停止になり1年以上経過していた場合

✅ 金銭債権の全額が回収不能となった場合
・債務者の資産状況などから全額回収できないことが明らかになった場合

(3) 貸倒損失の節税効果

例:
・売掛金総額:500万円
・回収不能が確定
➡ 貸倒損失として500万円を計上

法人税率33%の場合
500万円 × 33% = 165万円の節税効果

(4) 貸倒損失の計上のポイント

・税務上、回収不能と認定される証拠(督促状、取引停止通知書等)が必要
実態に即した判断が求められる

5. まとめ

売掛金の評価を見直し、適切な会計処理を行うことで、課税所得を減少させ法人税負担を軽減できます。「貸倒引当金」と「貸倒損失」を適切に活用することで、未回収リスクに備えつつ、財務内容の健全化と資金繰りの安定を図ることが可能です。

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