固定資産の資産計上細分化を利用した節税方法
企業が設備投資や固定資産の購入を行う際、資産を一括して計上するのではなく、細分化して計上することで節税効果を高めることが可能です。固定資産を細分化して計上することで、減価償却費を早期に計上できるようになり、課税所得を圧縮できるためです。本稿では、固定資産の資産計上細分化による節税方法について、具体的な手法や注意点を含めて詳しく解説します。
1. 固定資産の資産計上細分化とは
固定資産とは、企業が長期にわたって事業で使用する資産を指します。具体的には以下のようなものが含まれます。
・建物(オフィス、工場など)
・機械設備
・車両
・器具・備品(パソコン、机、椅子など)
・土地
固定資産を取得した場合、会計上は「資産」として計上し、耐用年数に応じて減価償却を行います。しかし、資産を一括して計上してしまうと、資産全体が長い年数の用年数になってしまうため、毎年の減価償却費が小さくなるため、節税効果が低くなることがあります。
そこで、資産を細分化して計上することで、短い耐用年数で減価償却を行い、節税効果を早期に享受できるようになります。
2. 資産細分化のメリット
(1) 減価償却費の増加による課税所得の圧縮
資産を細分化して計上することで、個別の資産に適用される耐用年数が短くなる場合があります。これにより、毎期の減価償却費が増加し、課税所得が圧縮されて法人税負担が軽減されます。
〈具体例〉
・建物(耐用年数:50年)→ 全体を「建物」として計上
・細分化案:
o 建物本体(耐用年数:50年)
o 空調設備(耐用年数:6年)
o 照明設備(耐用年数:5年)
o 内装(耐用年数:8年)
→ 資産を分解することで、短い耐用年数で減価償却できる
(2) 一括償却資産制度の活用
取得価額が30万円未満の資産は、特例により一括償却することが可能です。資産を細分化することで30万円未満の区分が生じる場合、一括償却の対象となり、即時経費計上が可能になります。
〈具体例〉
・取得価格:100万円の設備 → 一括計上不可
・細分化後:
o 本体 28万円 → 一括償却可能
o 付属機器 28万円 → 一括償却可能
o 配線 28万円 → 一括償却可能
→ 節税効果:30万円未満に分解して即時償却可能
3. 具体的な細分化手法
(1) 建物・設備の区分細分化
建物や設備を「建物本体」と「附属設備(空調、照明、内装など)」に分けて計上することで、耐用年数を短くすることが可能です。
・建物本体 → 耐用年数20〜50年
・附属設備(空調設備・照明設備など) → 耐用年数5〜10年
(2) 機械・装置の区分細分化
機械や装置を「機械本体」と「付属品・オプション部品」に分けることで、付属品部分を短い耐用年数で減価償却可能になります。
・機械本体 → 耐用年数10年
・オプション部品 → 耐用年数5年
(3) 内装や什器の細分化
オフィスや店舗の内装や什器は、内装工事費用、家具・備品などに分解することで、短期償却が可能になります。
・壁紙・床材 → 耐用年数6年
・机・椅子 → 耐用年数5年
・照明設備 → 耐用年数5年
4. 資産細分化による節税効果の試算
〈具体例〉
・建物(取得価格:2,000万円)
・資産細分化案:
o 建物本体(耐用年数:50年)→ 1,200万円
o 空調設備(耐用年数:6年)→ 400万円
o 照明設備(耐用年数:5年)→ 400万円
〈減価償却費〉
・建物本体 → 1,200万円 ÷ 50年=24万円/年
・空調設備 → 400万円 ÷ 6年=66.7万円/年
・照明設備 → 400万円 ÷ 5年=80万円/年
→ 合計 170.7万円/年
〈一括計上の場合〉
・2,000万円 ÷ 50年=40万円/年
→ 毎年の減価償却費増加額:170.7万円 − 40万円=130.7万円
→ 法人税率33%の場合
→ 130.7万円 × 33%=約43万円の節税効果
5. 注意点
・過度な細分化は税務調査で否認される可能性がある
・細分化の根拠を明確にし、証憑書類を適切に保存
・実態に基づいた区分細分化を行う
6. まとめ
固定資産の資産計上を細分化することで、短い耐用年数による減価償却費増加、一括償却資産の適用などにより節税効果が期待できます。特に節税目的で不動産投資を行っている場合、節税額のポイントは減価償却費になります。躯体と設備を明確にして適切な区分細分化と正確な帳簿処理を行うことで、法令遵守しつつ最大限の節税効果を得ることが可能です。

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