赤字の繰り越しを利用した節税方法
法人経営において、赤字(欠損金)が発生することは珍しくありません。赤字は一見すると経営にとって不利な状況に思われがちですが、税務上はこの赤字を将来の黒字と相殺することが可能です。これを 「欠損金の繰越控除(赤字の繰り越し)」 といい、企業の節税対策として重要な役割を果たします。赤字を適切に処理・繰り越すことで、将来の課税所得を減少させ、法人税の負担を軽減できるため、企業のキャッシュフロー改善や経営の安定化に大きく貢献します。
1. 赤字の繰り越しとは
赤字の繰り越し(欠損金の繰越控除)とは、企業が特定の事業年度に生じた赤字を翌期以降に繰り越して、将来の黒字と相殺する制度です。この制度により、課税所得を減少させ、結果的に法人税を軽減することが可能となります。
1-1. 繰越控除の法的根拠
赤字の繰り越しに関する制度は、法人税法第57条 に基づいており、一定の条件を満たせば最大で 10年間 にわたり赤字を繰り越すことが認められています。
2018年度の税制改正により、大企業と中小企業で繰り越し控除の適用条件に差があるものの、中小企業にとっては依然として有利な節税方法となっています。
1-2. 赤字の繰り越し対象
赤字の繰り越しに利用できるのは、主に次のような項目です。
・営業活動による損失(営業赤字)
・資産売却による損失
・為替差損
・減価償却費の計上による損失
・災害による損失
これらの損失が発生した場合、税務申告で欠損金として適切に計上しておけば、将来の黒字と相殺が可能です。
2. 赤字の繰り越しによる節税効果
赤字を繰り越すことで得られる節税効果は、将来の利益に対する課税所得を減少 させることにより実現します。繰り越しが可能な期間中に利益が出た場合、その利益から繰り越した赤字分を控除することで、納税額を大幅に減らすことが可能です。
2-1. 節税効果の仕組み
赤字の繰り越しが節税につながる仕組みは以下の通りです:
1. 赤字を繰り越し
→ ある年度に損失が発生した場合、それを欠損金として翌期以降に繰り越す。
2. 将来の黒字と相殺
→ 翌期以降に利益が出た場合、繰り越した赤字と相殺することで課税所得を減少させる。
3. 法人税が軽減
→ 課税所得が減少することで、法人税が軽減される。
2-2. 節税の具体例
【ケース1】
・2024年に1,000万円の赤字が発生
・翌2025年に2,000万円の利益が発生
・繰り越した赤字1,000万円を利益と相殺
→ 課税所得は 2,000万円 - 1,000万円 = 1,000万円 となる
→ 法人税実効税率33%の場合、本来は660万円の法人税が330万円に軽減
➡ 節税効果:330万円
【ケース2】
・2024年に2,000万円の赤字
・翌2025年に1,000万円の利益
・繰り越しにより相殺して課税所得ゼロ
・さらに2026年に1,000万円の利益が発生した場合、残った赤字1,000万円を相殺
→ 2025年と2026年の法人税がゼロになる
→ 繰り越した赤字をフルに活用可能
3. 赤字の繰り越しにおけるルール
3-1. 赤字の繰越期間
・最大10年間(平成30年度の税制改正により延長)
・2017年以前は9年間だったが、2018年から10年間に延長
3-2. 繰越控除の適用割合
・中小企業:100%まで繰越控除が可能
・大企業:利益の50%までの繰越控除が可能
3-3. 適用条件
・適正な税務申告を行っていること
・青色申告法人であること(青色申告を行っていないと赤字の繰越は不可)
3-4. 青色申告の届出期限
・法人設立から 3ヶ月以内 または 事業年度終了日の前日 までに提出
4. 赤字の繰り越し活用時の注意点
✅ 繰り越した赤字は10年間で消化する必要がある
✅ 税務調査で赤字計上の根拠を明確にできるように資料を整備
✅ 合併や組織再編があると赤字の繰り越しが制限される可能性がある
✅ 青色申告を適切に行っていないと繰り越しは適用不可
✅ 黒字と相殺可能なのは課税所得のみ(税額控除とは異なる)
5. 赤字の繰り越しの有効活用ポイント
・短期的なキャッシュフロー改善
→ 繰越控除により納税負担を減らし、資金繰りを安定化
・黒字化が見込まれる場合に活用
→ 将来の利益見込みに応じて、戦略的に赤字を繰り越す
・中小企業の強みを活かす
→ 中小企業は100%の繰越控除が可能なため、最大限に活用
6. まとめ
赤字の繰り越しは、企業が赤字を有効に活用して節税を図るための重要な手段です。青色申告法人であれば、赤字を最大10年間繰り越し可能であり、将来の利益と相殺することで法人税の負担を軽減できます。適切な会計処理と戦略的な活用により、企業の財務体質を改善し、経営の安定性を強化することが可能です。

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