社会保険料の未払計上を利用した節税方法

法人経営において、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など)の未払計上は、発生主義会計に基づいた会計処理の一つです。未払い社会保険料を適切に計上することで、課税所得を圧縮し、結果的に法人税負担を軽減する節税効果が得られます。

社会保険料は法人にとって大きな負担となるため、未払計上を活用して費用を前倒しで計上することで、法人税をはじめとする税負担を軽減し、キャッシュフローを改善することが可能です。

ここでは、社会保険料の未払計上に関する基本的な考え方や具体的な節税方法、適用における注意点について詳しく解説します。

1. 社会保険料の未払計上とは?

社会保険料は、法人と従業員が共同で負担し、法人が従業員の給与から控除した上で納付する義務があります。社会保険料のうち、法人が負担する部分は損金(費用)として計上可能です。

【社会保険料の種類】

種類 負担者 内容
健康保険料 会社・従業員 医療費や傷病手当金の給付など
厚生年金保険料 会社・従業員 老齢年金や障害年金の給付など
雇用保険料 会社・従業員 失業給付や教育訓練給付など
労災保険料 会社 労働災害時の補償

法人負担分の社会保険料は、費用として損金算入することで課税所得を減少させることが可能です。

2. 社会保険料の会計処理の基本

社会保険料の会計処理は「発生主義」に基づき、未払い分を決算時に計上します。

【発生主義とは?】

・取引が発生した時点で収益や費用を認識する会計処理の方法
・実際の支払い時ではなく、発生時点で社会保険料を費用として認識する

【社会保険料の仕訳処理例】

例:月末時点で社会保険料50万円が未払いの場合

(1) 決算時の仕訳(未払い計上)
法定福利費 50万円 / 未払費用(社会保険料) 50万円

(2) 翌月の納付時の仕訳
未払費用(社会保険料) 50万円 / 普通預金 50万円

決算時に社会保険料を未払計上することで、その期の費用として処理され、課税所得を減少させることが可能です。

3. 未払計上を利用した節税の具体的な方法

未払計上を利用した節税方法には、以下のような手法があります。

(1) 決算月分の社会保険料を未払計上

通常、社会保険料の納付は月末に行われますが、月末が土日祝日の場合には翌月に納付されることになります。決算月分の社会保険料を決算時に「未払費用」として計上することで、当期の損金に算入できます。

例:
・決算月:3月
・社会保険料:50万円
➡ 3月に「未払費用」として50万円を計上
➡ 法人税率33%の場合
50万円 × 33% = 16.5万円の節税効果

(2) 賞与支給に関連した社会保険料を未払計上

決算までに賞与を支給した場合、その賞与にかかる社会保険料も未払計上が可能です。

例:
・賞与額:1000万円
・社会保険料率:15%
➡ 社会保険料:1000万円 × 15% = 150万円
➡ 賞与にかかる社会保険料を未払計上
➡ 法人税率33%の場合
150万円 × 33% = 50万円の節税効果

4. 未払計上に関する注意点

✅ 未払社会保険料を過大に計上すると、税務調査で指摘を受ける可能性がある
✅ 未払計上した社会保険料は、翌期に実際に支払いが行われる必要がある
✅ 法人税申告書において「未払社会保険料の内訳」を正確に記載する必要がある
✅ 決算月をまたぐケースでは、発生主義に基づき適切に費用計上する

5. まとめ

社会保険料を未払計上することで、決算期の損金を増やし、課税所得を減少させることで節税が可能です。特に決算期末において賞与を支払った場合、それに伴う社会保険料を未払計上することで効果的に節税できます。

未払計上は会計処理において適切に行えば、財務の健全化やキャッシュフロー改善にも繋がるため、積極的に活用すべき節税手法といえます。

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