家族への給与支給を利用した節税方法
個人事業主や中小企業経営者にとって、家族への給与支給は効果的な節税方法のひとつです。事業を運営している場合、家族に給与を支払うことで所得の分散を図り、所得税や住民税の負担を軽減することが可能です。また、社会保険料や事業所得にかかる税金の軽減にもつながるため、適切に行えば家族全体での手取り額が増える可能性があります。以下では、家族への給与支給を活用した節税方法について詳しく解説します。
1. 家族への給与支給による節税の基本的な仕組み
(1) 所得税の累進課税制度を利用した節税
所得税は累進課税制度が採用されており、所得が高くなるほど税率が上がります。そのため、一人に集中した所得を家族に分散させることで、課税所得を引き下げ、適用される税率を低く抑えることが可能です。
《例》
・事業主が500万円の利益をすべて自身の所得にした場合、税率20%(住民税を含むと30%程度)が適用されるケース
・配偶者や子供に給与として100万円ずつ支給し、事業主の所得を300万円に分散した場合、税率は10%程度になる可能性がある
このように、所得を分散させることで全体の税負担が軽減されます。
(2) 必要経費として計上できる
家族への給与は、事業の必要経費として計上できるため、事業所得(課税対象となる所得)を減らす効果があります。
・必要経費に計上することで所得税や住民税の対象となる所得額が減少
・さらに、事業所得に対する個人事業税(所得290万円を超える部分に課税される)の軽減にもつながる
《例》
・年間500万円の事業所得 → 家族に200万円の給与を支給 → 事業所得300万円に減少
・事業所得が減ることで、個人事業税や所得税の軽減効果が発生
2. 家族への給与支給の具体的な方法
家族に給与を支給する場合、以下の方法を正しく行う必要があります。適切に処理しないと、税務署から指摘を受けたり、経費として認められなかったりする可能性があります。
(1) 青色申告専従者給与を活用する
個人事業主の場合、青色申告専従者給与制度を利用することで、家族への給与支給を経費として認めてもらうことが可能です。
条件:
・青色申告者であること
・配偶者や15歳以上の親族が「専従者」であること(6ヶ月以上、事業に従事している)
・専従者給与額を「青色専従者給与に関する届出書」で事前に税務署に届け出ること
・届出額の範囲内で適正な額の給与を支給すること
・支給した給与が事業規模や内容に見合った額であること
注意点:
・届出を忘れると経費計上が認められない
・配偶者や親族に支給する給与額が過大だと指摘される可能性がある
(2) 白色申告の場合は「事業専従者控除」を活用
白色申告の場合、青色申告専従者給与のように給与を経費計上することはできませんが、「事業専従者控除」として一定額を所得から控除できます。
控除額:
・配偶者 → 年間86万円まで
・その他の親族 → 年間50万円まで
ただし、専従者が複数いる場合でも1名分のみが控除対象になるため、節税効果は限定的です。
(3) 法人の場合の役員給与・使用人給与として支給
法人経営者の場合、家族を役員や従業員として給与を支給することで節税が可能です。
・役員給与 → 毎月同額支給
・従業員給与 → 市場相場や労働の対価として妥当な金額で支給
メリット:
・法人税の課税対象所得を減らせる
・家族への給与は社会保険料の加入要件を満たせば社会保険に加入可能
・社会保険料を支払うことで将来の年金や健康保険の給付を受けられる
注意点:
・役員給与の場合は定期同額給与の原則があるため、毎月同額を支給する必要がある
・過大な役員報酬や給与は損金(経費)として認められない可能性がある
3. 社会保険料負担の軽減効果
家族への給与支給によって、社会保険料の負担軽減も期待できます。
《例》
・家族を従業員として雇用 → 社会保険に加入 → 家族の社会保険料負担が増えるが、事業主自身の社会保険料負担が軽減
・家族が社会保険に加入することで、将来的に年金や健康保険給付を受けられるメリット
4. 注意すべきポイント
・実態がない労働への給与支給は経費として認められない
・必要以上に高額な給与を設定すると税務署から「過大給与」として指摘を受ける可能性
・家族に給与を支給する際は、勤務実態や労働内容を明確にし、勤務記録や給与台帳を整備する
5. まとめ
家族への給与支給を活用した節税方法は、所得の分散や必要経費の増加により所得税や住民税の負担を減らし、社会保険料の軽減にもつながる効果的な手段です。特に、青色申告専従者給与や法人の役員給与・従業員給与を適切に利用すれば、合法的に節税しつつ家族全体の所得を増やすことが可能です。ただし、過大な給与設定や実態のない給与支給は認められないため、適正な範囲内で計画的に運用することが重要です。

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