棚卸資産の評価損・廃棄計上を利用した節税方法
法人にとって、棚卸資産(在庫)は重要な資産であり、財務状況や経営成績に大きな影響を与えます。しかし、在庫の評価や管理を適切に行うことで、税負担を軽減し、キャッシュフローを改善できる可能性があります。特に、棚卸資産の評価損や廃棄損を適切に計上することで、課税所得を圧縮し、効果的な節税が可能になります。ここでは、棚卸資産の評価損・廃棄損を利用した節税方法について、詳しく解説します。
1. 棚卸資産の評価損とは
棚卸資産の評価損とは、法人が保有する棚卸資産(原材料、仕掛品、製品、商品など)の価値が、取得原価(仕入れ価格)よりも下落した場合に、その下落分を損失として計上することを指します。
▶ 評価損が発生するケース
・市場価格の下落
・破損や劣化による価値の減少
・技術革新や流行の変化による在庫価値の低下
・需要減退による価格競争の激化
▶ 会計処理方法
棚卸資産は原則として取得原価で計上しますが、時価(正味実現可能価額)が取得原価を下回った場合、低価法(時価評価)を適用して、その差額を評価損として損益計算書に計上することが認められています。
<仕訳例>
例えば、取得原価100万円の在庫の時価が80万円に下落した場合、評価損を計上する仕訳は次のようになります。
(借方)棚卸資産評価損 200,000円 / (貸方)棚卸資産 200,000円
この結果、20万円分の損失が発生し、課税所得が20万円減少するため、その分法人税等が軽減されます。
2. 棚卸資産の廃棄損とは
棚卸資産の廃棄損とは、保有している棚卸資産を物理的に廃棄または除却した場合に、その廃棄によって発生する損失を指します。
▶ 廃棄損が発生するケース
・破損や腐敗などにより販売できなくなった在庫
・型落ちや陳腐化により商品価値がなくなった在庫
・保管コストの削減を目的とした在庫整理
▶ 会計処理方法
廃棄を行った場合は、取得原価を費用(廃棄損)として計上します。また、実際に廃棄した証拠(写真や廃棄証明書)を保存しておくことで、税務調査時に正当性を証明することができます。
<仕訳例>
取得原価100万円の在庫を廃棄した場合、以下のような仕訳を行います。
(借方)棚卸資産廃棄損 1,000,000円 / (貸方)棚卸資産 1,000,000円
この結果、100万円の損失が発生し、課税所得が100万円減少するため、法人税負担が軽減されます。
3. 節税効果の具体例
▶ 例:課税所得1,000万円の法人が棚卸資産評価損100万円を計上した場合
・計上前の課税所得:1,000万円
・棚卸資産評価損:100万円
・計上後の課税所得:900万円
法人実効税率が33%の場合
・計上前の法人税額:1,000万円 × 33% = 330万円
・計上後の法人税額:900万円 × 33% = 297万円
👉 節税額:330万円 − 297万円 = 33万円
このように、評価損や廃棄損を計上することで、直接的な節税効果が期待できます。
4. 節税を最大化するためのポイント
① 在庫管理を徹底する
・定期的に棚卸を行い、在庫の状態を正確に把握する
・市場動向や需要の変化を予測し、過剰在庫を回避
② 低価法を適用する
・取得原価より時価が下落した場合、低価法に基づき評価損を適切に計上する
③ 実際の廃棄を証明する
・廃棄証明書や写真を保存し、廃棄損の正当性を証明できるようにする
④ 税務調査を見越した準備を行う
・評価損や廃棄損を計上した際の根拠資料(市場価格データ、在庫管理記録など)を整備しておく
5. 注意点とリスク
✅ 過剰な評価損・廃棄損の計上はリスク
・市場価格が一時的に下落しただけの場合や、在庫価値がまだある場合に評価損を過剰に計上すると、税務調査で否認される可能性がある。
✅ 実態のない廃棄損計上はNG
・実際には在庫が存在しているにもかかわらず、架空の廃棄損を計上すると脱税行為と見なされ、重加算税やペナルティが課される可能性がある。
✅ 評価損や廃棄損の計上タイミングに注意
・決算期直前に過剰な評価損・廃棄損を計上すると、不自然な会計処理と判断される可能性があるため、慎重な対応が必要。
6. まとめ
棚卸資産の評価損や廃棄損を計上することで、課税所得を減少させて法人税負担を軽減することが可能です。ただし、評価損や廃棄損を計上する際は、正確な在庫管理や市場価格の把握、証拠資料の整備が重要です。過剰な計上や架空の損失計上は税務調査のリスクを高めるため、専門家のアドバイスを受けながら適切に対応することが求められます。

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