採用費の前倒しを利用した節税方法

法人経営において「採用費」は人材確保のために必要不可欠な経費です。最近は採用確保が難しいことから有料求人広告の活用を利用することが多くなっておりますが、その発生タイミングや会計処理を工夫することで、法人税負担を軽減し、結果的に節税効果を得ることが可能です。特に、採用費を前倒しで計上することで、当期の損金を増加させ、課税所得を圧縮することで法人税を減少させる効果が期待できます。

採用活動は長期的な事業成長に直結する重要な経営戦略の一つです。そのため、採用費を単なるコストではなく、効果的に節税に結びつけることで、財務健全性を維持しつつ、成長戦略に役立てることが可能です。

ここでは、採用費の定義や種類、前倒し計上の具体的な方法、節税効果、注意点について詳しく解説します。

1. 採用費とは?

採用費とは、法人が新たな人材を確保するために必要となる経費のことです。採用活動には広告費や人材紹介費、採用イベント費用などが発生し、それらの費用は損金として計上できます。

【採用費に含まれる主な項目】

項目 内容
求人広告費 求人情報誌、Webサイトなどへの広告掲載費用
人材紹介料 人材紹介会社への成功報酬・契約料
採用イベント費用 説明会や面接会場のレンタル費用、スタッフの交通費など
教育・研修費用 入社前研修や採用後の教育プログラム費用
内定者フォロー費用 内定者との交流イベント、資料作成費用など
外部採用コンサルティング費用 採用活動に関する外部コンサルへの報酬

これらの費用は、原則として発生主義に基づいて費用計上が可能です。そのため、採用活動が来期に行われる場合でも、前倒しで費用計上することで課税所得を減少させ、法人税を軽減することができます。

2. 採用費の前倒し計上の考え方

会計処理において「発生主義」に基づき、将来に支出が見込まれる採用費を、事前に前倒しで費用計上することで節税効果を得ることが可能です。

【発生主義とは?】

・実際に支払いが発生していなくても、契約が成立している、または役務提供が完了している段階で費用計上が可能
・採用活動に関して、採用広告契約や人材紹介契約などが締結されていれば、費用計上できるケースが多い

【採用費の前倒し計上が可能なケース】

✅ 求人広告掲載費:契約を締結した時点で計上可能
✅ 人材紹介料:内定承諾時点で費用計上可能

【採用費の前倒し計上ができないケース】

❌ 採用費に関する支払い義務が不確定の場合
❌ 契約内容に不備があり、支払い義務が成立していない場合
❌ 実際にサービスが提供されていない場合


3. 採用費の前倒し計上による具体的な節税方法

採用費を前倒しで計上し、当期の損金を増やすことで課税所得を圧縮し、結果的に法人税負担を軽減することが可能です。

(1) 求人広告費の前倒し計上による節税

求人広告費は契約を締結した時点で費用計上可能です。

例:
・決算月:3月
・3月から複数月に渡る掲載の求人広告費:100万円
➡ 3月に採用活動費として計上可能
➡ 法人税率33%の場合
100万円 × 33% = 33万円の節税効果

(2) 人材紹介料の採用決定時計上による節税

人材紹介料は「採用が決定した時点」で費用計上可能です。

例:
・3月に内定承諾
・紹介料:150万円
➡ 3月に損金として計上可能
➡ 法人税率33%の場合
150万円 × 33% = 50万円の節税効果

4. 採用費の前倒し計上に関する注意点

✅ 契約内容に基づき、支払い義務が確定している必要がある
✅ 前払費用として計上したものが未使用の場合、税務上の指摘を受ける可能性がある
✅ 会計基準に従った適切な処理が求められる

5. まとめ

採用費を前倒しで計上することで、課税所得を圧縮し、法人税の負担を軽減できます。特に、採用広告費や人材紹介料などは契約内容が明確であるため、全額計上が可能です。

採用費の前倒し計上を適切に活用し、節税と資金繰りの改善を両立することで、法人の成長戦略を加速させることができるでしょう。

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