決算賞与を活用した節税方法

法人が利益を計上した場合、そのままにしておくと法人税の課税対象となり、結果として手元に残る資金が減少してしまいます。このような状況を回避しつつ、従業員のモチベーションを向上させる手段として「決算賞与」の支給が有効です。決算賞与を適切に活用すれば、従業員への還元を通じて法人の業績向上に貢献しながら、法人税を抑えることができます。ここでは、決算賞与を利用した節税方法やその具体的な手続き、注意点などについて詳しく解説します。

 

1. 決算賞与とは?

決算賞与とは、法人が決算時に利益が出た際に、その利益の一部を従業員に対して賞与として支給することを指します。通常の賞与(夏季・冬季賞与)はあらかじめ労働契約や就業規則などに基づいて支給されるものですが、決算賞与は決算内容を踏まえた上で、臨時的に支給される点が特徴です。

決算賞与には以下のような効果があります:
・従業員のモチベーション向上:業績に応じて支給されるため、従業員の仕事への意欲が増し業績改善に繋がる可能性がある。
・利益の適正な分配:法人が計上した利益を適切に従業員に分配することで、企業全体のパフォーマンスを高める。
・法人税の節税:決算賞与は損金(経費)として計上可能であり、法人税を抑える効果がある。

 

2. 決算賞与を節税に活用する仕組み

決算賞与を節税に活用するためには、支給額を「損金算入」する必要があります。損金算入とは、企業の利益を計算する際に費用として計上することを指します。決算賞与を損金として計上すれば、その分利益が減るため、法人税の課税対象額が減少し、結果として法人税額が下がります。

【節税の基本的な仕組み】

決算賞与を支給することで、利益が減少する
→ 法人税の課税対象利益が減少

たとえば、以下のようなケースを考えてみます:

項目 決算賞与なし 決算賞与あり
売上 1億円 1億円
経費(通常費用) 7,000万円 7,000万円
利益 3,000万円 3,000万円
決算賞与 0円 1,000万円
課税所得 3,000万円 2,000万円
法人税率(30%) 900万円 600万円
節税効果 0円 300万円

上記の例では、決算賞与を1,000万円支給することで課税所得が1,000万円減少し、その結果、法人税が300万円(30%)減少しています。

 

3. 決算賞与を損金に算入するための条件

決算賞与を法人税法上の損金として認められるためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります:

(1) 決算期末までに「支給額」を従業員ごとに通知していること

・決算賞与の金額を、決算期末までに従業員に対して明確に通知する必要があります。
・口頭のみでなく書面やメールなど、証拠として残る方法で通知することが重要です。

(2) 決算期末から1か月以内に実際に支給すること

・通知を行った後、決算期末から1か月以内に決算賞与を実際に支給しなければなりません。
・例えば、決算が3月31日の場合、4月30日までに振り込みなどで実際に支給する必要があります。

(3) 損金経理をしていること

・決算賞与を会社の帳簿上で「未払賞与」などとして経費処理していることが求められます。
・決算書や申告書に正しく記載する必要があります。

 

4. 決算賞与の具体的な実施手順

決算賞与を節税目的で活用する場合、以下の手順に従って進めます:

① 業績を確認する
・決算賞与を支給するかどうかを判断するために、決算の状況を確認します。
・支給可能な利益がどの程度あるか、キャッシュフローへの影響を検討します。

② 支給方針を決定する
・支給対象者、支給額、支給時期などを決定します。
・会社の利益状況や従業員へのインセンティブ効果を考慮して決定します。

③ 従業員への通知
・書面やメールなどで従業員に決算賞与の内容を通知します。
・証拠として記録が残る形で通知することが重要です。

④ 支給処理
・決算期末から1か月以内に実際に支給します。
・振込履歴や支給明細をきちんと保管します。

⑤ 経理処理
・決算書や法人税申告書に「未払賞与」などとして正しく経理処理します。
・支給額が損金に算入されていることを確認します。

 

5. 決算賞与のメリットと注意点

【メリット】

✅ 法人税の負担を軽減できる
✅ 従業員のモチベーションが向上する
✅ 資金を有効活用できる

【注意点】

❌ 条件を満たさないと損金不算入となる
❌ 会社のキャッシュフローが悪化する可能性がある
❌ 賞与の不公平感が従業員間で生じる恐れがある

 

6. まとめ

決算賞与は、単に従業員への利益分配というだけでなく、法人税の節税効果を狙える重要な経営戦略の一つです。適切に実施すれば、法人税負担を減らしつつ、従業員の士気を高めることができます。ただし、損金算入の条件を満たさなかった場合、税務上のトラブルが発生する可能性があるため、事前に十分な準備を行った上で実施することが重要です。特に、決算期日前に支給が可能であれば支払いを完了させておいたほうが、税務調査において否認されないという点ではおすすめかと思います。

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