経費の1年分前払いを利用した節税方法

法人経営において、利益が大きくなった場合には法人税負担が増加します。そのため、節税対策として「経費を増やして課税所得を圧縮する」ことが効果的です。経費を増やす方法はいくつかありますが、その中でも有効な手段の一つが「経費の前払い」です。
1年分の経費を前払いすることで、当期の費用として計上し、課税所得を圧縮することで法人税負担を軽減できます。本稿では、経費の前払いを活用した節税方法について詳しく解説します。

1. 経費の前払いとは

企業が支出した費用は、通常その費用が発生した会計期間に費用として計上します。
しかし、前払いとは、実際にサービスや物品の提供を受ける前に費用を支払うことで、支払い時に費用として計上する方法です。

✅ 具体例
・1月から12月までの家賃を1月に一括で支払った場合 → 1年分の家賃を当期の費用として計上可能
・年間の保険料やリース料を年初に前払い → 当期の費用として計上可能

2. 経費の前払いが節税に有効な理由

(1) 課税所得を圧縮できる

・前払いした費用をその年度の経費として計上することで、課税所得が減少
・課税所得が減少すれば、法人税負担も減少

✅ 【例】
・企業の利益が1,000万円
・1年分の家賃として300万円を前払い
・法人実効税率33%
<前払いしない場合>
・課税所得:1,200万円
・法人税負担:1,200万円 × 33% = 396万円
<前払いする場合>
・課税所得:1,200万円 − 300万円 = 900万円
・法人税負担:900万円 × 33% = 297万円

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(2) キャッシュフローの最適化

・節税効果により税負担が減ることで、手元資金を確保
・節税によって生じた資金を運転資金や新たな投資に活用可能

(3) 税率の変動リスクを回避

法人税率や税制は年度ごとに改正される可能性があります。
・将来の法人税率引き上げリスクを回避
・現行の税率が有利な場合に前払いしておくことで、節税効果を確実に享受

3. 節税効果のある前払い可能な経費

前払いによる節税効果を得るためには、税務上で前払い可能な経費を正しく理解しておく必要があります。以下に、前払いが認められる主な経費を示します。

(1) 賃貸料(家賃)

・事務所や工場、倉庫などの家賃
・1年分を前払い可能
・一括で支払うことで経費計上が可能

(2) 保険料

・企業が加入している損害保険、生命保険
・年間分の保険料を前払い可能

(3) リース料

・車両や設備のリース契約に関する費用
・1年分を前払いすることで経費計上可能

(4) 広告宣伝費

・1年間分の広告掲載費用
・事前契約によって前払いすることで経費計上可能

(5) 会費・メンバーシップ料

・商工会議所、業界団体などの年会費
・年払いで前払い可能

(6) システム利用料

・クラウドサービスやソフトウェアの年間利用契約
・1年分の使用料を前払い可能

4. 節税効果を最大化するためのポイント

✅ (1) 支払い時期のコントロール
・決算前に前払いを行うことで、当期の課税所得を圧縮
・節税効果を最大化

✅ (2) 契約条件を確認
・前払い可能かどうか契約内容を確認
・途中解約の場合の返金条件などを確認

✅ (3) 経費計上ルールの遵守
・1年以上にわたる契約の場合、13か月以上の前払いをすると全額を当期に費用計上できなくなるため、短期前払費用に該当するかどうか確認

5. 節税効果の具体例

【例】
・法人の利益が2,000万円
・年間の家賃300万円、保険料100万円、リース料150万円を前払い

項目 前払いしない場合 前払いした場合
課税所得 2,000万円 1,450万円(2,000万円 − 550万円)
法人税負担(33%) 660万円 478万円
節税効果 182万円

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6. 注意点とリスク

❌ 前払いが認められないケース
・13か月以上の費用を前払いした場合 → その年度の費用計上は否認される可能性

❌ 資金繰りの悪化リスク
・前払いによって資金繰りが厳しくなる可能性
・無理な前払いは資金ショートの原因になる

7. まとめ

1年分の経費を前払いすることで、課税所得を圧縮し、法人税負担を軽減できます。特に家賃や保険料、リース料などは前払いが認められているケースが多く、節税効果を早期に享受可能です。ただし、資金繰りへの影響や税務上の認定基準を十分に確認した上で、最適な節税計画を立てることが重要です。

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