【会社設立後に知っておきたい税務】海外テレワーク勤務者へ支払う給与への所得税の課税の有無

[相談]

 当社は、昨年度の人材採用計画において、アメリカ在住のアメリカ人研究者を招聘して日本本社で雇用し、日本で新製品の研究開発を行ってもらうこととしておりました。
 しかし、このたびの新型コロナウイルス感染症拡大の影響でそのアメリカ人研究者の来日が困難となったため、代替策として、その者と雇用契約を締結したうえで、当社のためにアメリカ国内において開発予定の製品に関する情報収集活動等を行ってもらっています(なお、業務報告や勤怠管理は、電子メールやオンライン面談および専用システムを用いて行っています)。
 そこでお聞きしたいのですが、このアメリカ人従業員に対して当社が日本から支払っている給与は、所得税の課税対象となるのでしょうか。

 

[回答]

 ご相談の給与については、所得税の課税対象にはならないと考えられます。

 

[解説]

1.「居住者」と「非居住者」の区分の違いによる、所得税の課税範囲の違い

 所得税法上、「居住者(※1)」には、その所得が生じた場所が日本国内・日本国外を問わず、全ての所得に対して所得税が課税されることと定められています(全世界課税)。

 一方、「非居住者」には、日本国内において生じた所得(国内源泉所得※2)に限って、所得税が課税されることと定められています。

  1. ※1 所得税法上の「非永住者」については、国内源泉所得及び国外源泉所得で国内において支払われ、又は国外から送金されたものに対して所得税が課税されます。
  2. ※2 国内源泉所得には、給与等のうち国内において行う勤務等に基因するものが含まれています。

2.所得税法上の非居住者の定義

 上記1.のうち、「居住者」とは、「国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人」をいうものと所得税法で定められています。

 これに対し「非居住者」とは、「居住者以外の個人」をいうものと定められています。

 今回のご相談の場合、アメリカ人従業員は現時点において日本国内に住所を有していないこと等から、所得税法の非居住者に該当するものと考えられます。

 このため、そのアメリカ人従業員の所得については、国内源泉所得に限って我が国の所得税が課税されることとなりますが、その勤務はアメリカ国内(日本国外)において行われているとのことですので、その勤務に対して支払われる給与は所得税法上の国内源泉所得には該当せず、所得税の課税対象にはならないものと考えられます。


[参考]
所法2、5、7、161など

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