受贈者が贈与者より先に死亡した場合の相続時精算課税の課税関係
[相談]
私は今年で満80歳になる男性です(妻は10年以上前に亡くなっています)。
私は一昨年、保有している財産(現金2,000万円のみ。他の財産はなし)を一人息子(贈与時の年齢50歳)に贈与しました。
その際、一回の金銭の授受で贈与が完了し、かつ、贈与税ができるだけかからない方法を当時の顧問税理士に相談したところ、「相続時精算課税制度」の適用を提案されたため、その制度を利用して息子に上記財産を生前贈与しました。
しかし、1ヶ月前にその一人息子が交通事故で亡くなってしまったのです。
息子には結婚歴はなく子もいなかったため、息子の相続人は私だけです。このような場合、相続時精算課税の適用に伴う権利義務はどのようになるのでしょうか。
[回答]
ご相談の場合には、相続時精算課税の適用に伴う権利義務は消滅することとなります。
[解説]
1.相続時精算課税の概要
相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
相続時精算課税を選択した者(相続時精算課税適用者といいます)に係る相続税額は、相続時精算課税に係る贈与者(特定贈与者といいます)が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出します。
2. 相続時精算課税適用者が特定贈与者よりも先に死亡した場合
①原則的な取り扱い
特定贈与者の死亡以前にその特定贈与者に係る相続時精算課税適用者が死亡した場合には、その相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、その特定贈与者を除きます。)は、その相続時精算課税適用者が有していた相続時精算課税の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利又は義務(以下「相続時精算課税の適用に伴う権利義務」といいます。)を承継します。
この場合、相続時精算課税適用者の相続人(包括受遺者を含み、その特定贈与者を除きます。)が2人以上いる場合の各相続人が承継する相続時精算課税の適用に伴う権利義務の割合は、民法第900条から第902条まで(法定相続分・代襲相続分・指定相続分)に規定する相続分(その特定贈与者がいないものとして計算した相続分)によります。
②相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者のみである場合
相続時精算課税適用者の相続人が特定贈与者のみである場合には、相続時精算課税の適用に伴う権利義務はその特定贈与者及び相続時精算課税適用者の民法第889条の規定による後順位の相続人となる者には承継されず消滅することになります。
よって、今回のご相談の場合は、ご子息(相続時精算課税適用者)が亡くなられた時点でのご子息の相続人がご相談者(父:特定贈与者)のみであるため、上記②のとおり、相続時精算課税の適用に伴う権利義務はご子息からご相談者には承継されず、消滅することとなります。
[根拠法令等]
相続税法第21条の17第1項、第3項 相続税法施行令第5条の4第3項、第5条の5 相続税法基本通達21の17-3など
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